
ねこ写真を撮る話(2)
今回は、カメラの設定に関わる話=「絞り」「シャッター速度」「ISO感度」についてです。
いきなりカメラの原理から入るのはなじみが薄いですから、同じ原理でもっと身近な「日焼け」の話から始めようと思います。
日焼けは、ご承知のとおり、日射しに何時間かさらされることで皮膚に炎症を起こす現象です。日焼けの強さは、(1)日射しの強さ(縦軸)と、(2)さらされた時間(横軸)の2つの要素の掛け算の積、というかたちで表わされるとも言えますね。
かりに真夏の沖縄の強い日射しにさらされたとしても、外にいる時間が短ければ、さほどひどい日焼けにはなりません。
逆に、秋口の弱い日射しだとしても、一日中外にいるなら、それなりに日焼けます。
これをカメラの話に置き換えてみますと、写真がキレイに写る(≒肌がキレイに日焼けする)ためには、適度な光(明るさ)と適度なカメラの設定で、両者がうまくバランスが取れている必要がある、ということになります。この状態を「適正露出」と言います。
もしも光が多すぎる(明るすぎる)場合、そのままのカメラの設定にしていると、写真は白っぽくなり(白トビ)、細かいディテールが失われてしまいます。ちょうど、強い日射しで日焼けしすぎた状態です。この状態を「露出オーバー」と言います。
逆に、光が足らない(暗すぎる)場合、そのままのカメラの設定にしていると、写真は暗くなり(黒ツブレ)、やはり細かいディテールが失われてしまいます。ちょうど、日射しが弱くて全然日に焼けない状態です。この状態を「露出アンダー」と言います。
露出オーバー・露出アンダー、どちらもキレイには写りませんので、適正露出に戻すためになんらかの工夫をすることになります。前回紹介したクリップライトを使って足りない光を補うのは露出アンダーの物理的な補正です。逆にまぶしすぎる光を遮るようにカーテンをしめるとかが、露出オーバーの物理的な補正にあたります。
これらは直感的にわかりやすいですが、今回は「カメラの設定」について、ですので、別のアプローチで露出補正をしてみます。(ようやく本題です。)
「日焼け」や「写真」が2つの要素の掛け算=面積で表わされるということは、縦軸(明るさ)の増減に対して、横軸(設定)を調整してやれば、もとと同じ面積(=適正露出)になる計算です。
露出オーバーに対しては、横幅が短くなるように、カメラを設定すればよいですし、露出アンダーに対しては、横幅が長くなるようにすればよいです。ちょうど、日射しが強ければ外にいる時間を短くし、日射しが少し弱めならそのぶん長く外にいれば、どちらも適正な日焼けになる、というのと同じ勘定です。
では、具体的にどう設定すればよいのか? 3つの設定要素があります。(1)絞り、(2)シャッター速度、(3) ISO感度、です。
(1)「絞り」は、カメラのレンズに関する設定です。「F値」という単位で表わされ、F2.8 とか F5.6 などという数値で表現されます。この数字が小さくなると(たとえばF4.0からF2.8に絞りを開くと)、上の図で右に寄り、明るさを補ってくれることになります。別の言い方をすると、F値が小さくなると、クリップライトをつけたのと同じ効果になります。暗い部屋で撮るときは、F値を小さく(絞りを開いて)やればよい、ということです。
(2)「シャッター速度」は、カメラのシャッターに関する設定です。シャッターが開いている間だけ、カメラのフィルム部分(デジカメなら撮影素子部分)に光があたり、それが写真の像を結びます。感覚的にわかりやすいと思いますが、シャッタースピードが1/100秒よりは、1/30秒の方が明るい写真になります。暗い部屋で撮るときは、シャッタースピードを遅くしてやればよい、ということになります。
(3)「ISO感度」は、カメラのフィルムに関する設定です。デジカメはフィルムを使わない代わりに「撮影素子」というものが光を捕捉し、デジタルデータ化しています(たぶん──詳しくは知らないのであまり突っ込まないでください)。フィルムを知っている方は、ISO(ないしASA)100のフィルム、とか、400のフィルム、などと言っていたアレです。フィルムでは100、400、1600と刻んでいましたが、デジカメは通常100、200、400、800……と倍々で増えていきます。数値が多いほど感度が高く、少ない光でもよく写ります。デジカメの場合、暗い部屋で撮るときは、ISO感度を上げてやればよい、ということになります。(※余談ですが、このように1枚1枚の写真に自由にISOを設定できるようになったのが、デジカメが銀塩カメラと異なる最大の利点です。フィルムは、いったんカメラに装着すると24枚なり36枚なり、ずっとその感度で使わなければいけませんでしたから)。
まとめますね。
- 写真は、「周りの明るさ」と「カメラの設定」の2つの要素の積=面積のように表わすことができる
- 周りの明るさが足りないとき、それを補うようにカメラの設定を変えれば、物理的に光を補わなくてもよくなる
- カメラの設定は3つ=「絞り」「シャッター速度」「ISO感度」
- 暗い部屋の場合、(a)絞りを開く(F値を小さくする)、(b)シャッター速度を遅くする、(c)ISO感度を上げる、の3つのやりかたが考えられる
次回は、もう少し「絞り」「シャッター速度」「ISO感度」の話を続けながら、それらの設定を変えると、どういうメリット・デメリットがあるのかを紹介する予定です。
