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ねこ写真を撮る話(3)

前回は、「絞り」「シャッター速度」「ISO感度」を調節して、暗いところでも写真を撮れるようにしよう、というところまでお話ししました。「日焼け」の話にたとえると、強い日射しでも日焼けしないために、「外出時間を控える」のではなく、日傘をさしたり、白い長袖の服を着たり、日焼け止めを塗ったりすればよい、みたいなことになります。

でも、確かに日傘や白い長袖、日焼け止めは役に立つんですが、デメリットもありますよね? 日傘は片手がふさがってしまうし、真夏に長袖は白でも暑い。日焼け止めは肌の毛穴をふさいでしまうし、ひとによってはかぶれたりもする。それと同じで、「絞り」「シャッター速度」「ISO感度」にもデメリットがあります。今回はそういう話です。(実際に、どうやってカメラでそれらの設定を変えるのか(あるいは変えられないのか) は、次回に。)

最初に、今回の記事はかなり長いですので、シュークリームやワイン片手に(^_^);、読んでいただいてでけっこうです。まとめとしては「ISO感度を上げられる範囲いっぱいまで上げましょう」という話になります。

目次
  1. 絞りの話
  2. シャッター速度の話
  3. ISO感度の話
  4. 最近のデジカメ

1. 絞りの話

まず、わたしたちねこ飼いにとってはとてもなじみ深い「絞り」についてから。明るい窓際では針のように細かったねこの目(黒目)が、暗いところにいくほど開いていくのは、みなさんよくご承知だと思います。「ああ、瞳に入ってくる光の量を調節しているのだなあ」とさるねこ父は見るたびに思うのですが、カメラの「絞り」もそれと同じです。暗いところ(夜の蛍光灯の明かりの室内とか)では、ねこのように、絞りを開いてやればよいはずです。

(※なお、余談で、かつまったく好みの問題ですが、ねこ写真としては日なたの窓際の針のような目よりは、少し暗い場所でうるうるっと開いた黒目の方が、よりかわいい気がします。が、それはさておき。)

「絞り」をより絞った場合・より開いた場合に起こるのは、つぎのような現象です。

4-1

開く方向(図の右へ向かう方向)について説明すると、確かに絞りを開けば、暗いところでもものが見えるねこと同じく、暗いところでも写真が撮れることになります。しかし、ねこはいざしらず、カメラのレンズの絞りを開くと、それまでにはなかったデメリットが生まれる。それが「ピントの合う奥行きが狭くなる」という現象です。

コンパクトカメラではあまり実感しませんが(理由は次回)、一眼レフを使ってみると、一番絞りを開いた状態だと、ピントの合う範囲(奥行き)がわずか数cmになります。その前後は、ふわん、とボケた画になります。

ねこ写真にするとこんな感じです。カンナさんに登場してもらいましょう。

IMGP7754
[ Pentax K100D×Tamron SP AF28-75mm F/2.8 (model A09) ]
[ F3.2 | 1/15s | ISO800 ]

ピントは鼻先(特に鼻先の左側)に合っていますが、左目はまずまずなものの、右目ではもうピントがボケているのが黒目のふちのにじみからわかります。左ひげの根元や左のまゆ毛にはピントが合っていますが、右ひげや右まゆ毛の先の方はもうボケています。右耳なんかは、そこだけ取り出せば、完全にピンぼけです。

なんぼカンナが大きなねこでも、顔のつくりが10cmを超えるはずもないです。ということは、このくらい絞りを開いてしまうと、10cmずれただけでピンぼけしてしまうことがわかります。

ほとんどの方は、ピント合わせにオートフォーカスを使うと思いますが、とことこ歩くねこでも、絞りをいっぱいに開くと、オートフォーカスは追従しきれません(ピントを合わせ続けられません)。特に、カメラに近づいてくるねこがキビシイです。

「うちのカメラは、動いているねこを撮るときでも、ピントが合い続けるけどな?」と思われるかもしれませんが、それはいくつかの条件がそろっているからです。

  1. 明るい場所なのでオートフォーカスの条件がよい(基本的に、オートフォーカスは暗いところより明るいところの方がスピーディーに合います)
  2. 横方向に動いているので、カメラからの距離が変わらないため、ピントを変える必要がない
  3. あるいは、遠ざかる方向に動いているので、比較的ピントが合わせやすい(2倍遠ざかるのと、半分に近づくのとで、オートフォーカスのしやすさはだいたい等しくなります……なぜかというと……このへんから先はくどくなるので、数学が好きだった方は、理屈を考えていただければけっこうです)
  4. 実は、絞りがずっと絞られている(コンパクトデジカメだとその傾向があります)

逆に上の条件がそろっていないと、絞りを開いた場合は、確実にピンぼけします。つまり、絞りを開いたときは、(1)暗いとピンぼけする、(2)向かってくるとピンぼけする、ということです。「暗いから絞りを開きたいのに、暗いとピンぼけするんじゃ、意味ないじゃん!」と思われるかもしれませんが、まったくその通りです。このやり方──暗いときに絞りを開く──がうまくいくのは、あまり動かないものをとるときです。寝ているねことか、料理とか、インテリア・小物とか。

2. シャッター速度の話

……気を取り直して、次の「シャッター速度」の話に移りますが、結論から先に言うとこれも「意味ないじゃん!」となります──特に子猫の場合。「シャッター速度」を速くした場合・遅くした場合に起きるのは次のような現象です。

4-2

「絞り」同様、暗いのを補う=右へ向かう方向で考えます。シャッターを長い間開いておけば、フィルム=撮影素子に当たり続ける光の総量は増えます。が、簡単に想像がつくと思いますが、シャッターを開いている間に被写体が動くと「ブレ」ます。被写体だけではなく、カメラ(撮影者)も微妙に動きますので、仮に動かない静物を撮っていても、シャッター速度を遅くすると「ブレ」ます。

最近のデジカメは「手ぶれ補正」をうたうものが増えてきていますが、これはカメラ(撮影者)の動きによる「ブレ」を補正するものです。ないよりはあった方がもちろんいいですが、ねこの方が動いた場合はどうしようもありませんね。

今度はふみに登場してもらいます。

IMGP14598
[ Pentax K100D×Tamron SP AF28-75mm F/2.8 (model A09) ]
[ F4.0 | 1/40s | ISO800 ]

絞りはF4.0とやや開けてありますが、コルクマットの縁部分や新聞の文字などをみると、ふみの顔・手先あたりではピント自体はまずまず合っているはずです(足がボケているのは、ブレもそうですが、絞りの影響も大きいはず)。しかし、新聞紙の紙玉で激しく遊ぶふみの動きで、1/40 のシャッター速度では「被写体ブレ」を起こしてしまっていることがわかります。

シャッター速度をもっと上げるとどうなるでしょうか?

IMGP15486
[ Pentax K100D×Tamron SP AF28-75mm F/2.8 (model A09) ]
[ F4.0 | 1/100s | ISO3200 ]

このふみも、ねこじゃらしで相当激しく遊んでいるのですが、シャッター速度を1/100に上げたので、かなりブレが止まっています(それでも頭はブレています)。「時間よ止まれ!」ってところですね。

このように、暗い部屋で明るさを補うためにシャッター速度を下げる(遅くする)のも、動きの速い子猫の場合は限度がある、ということになります。さるねこ父の経験的には、1/40sあたりを境に、被写体ブレによる失敗率がぐんと上がるように思います。(もちろん、まぐれ当たり的に1/20sなどでも被写体ブレのない写真を撮れることはありますし、そういうときはたいがい妙におもしろい写真になったりします。)

※シャッター速度を上げると確かにブレは止まるのですが、同時に動きの乏しい画になりますね。個人的には、子猫写真については、多少の被写体ブレは「味」だと思っています。

3. ISO感度の話

さて、「絞り」は暗いと特にピントが合わなくなる、「シャッター速度」は子猫は動くからあまり遅くはできない、と来ました。最後の「ISO感度」はどうでしょうか?

実はデジカメ(一眼・コンパクトを問わず)あるいはケータイを使って暗い場所で写真を撮る場合、この「ISO感度」を上げるというのが一番現実的な打開策です。ただし、やはりデメリットがあります。

4-3

ISO感度を上げると、暗い部分をカメラはどうにかがんばって分析し、画作りをしようとします。とはいえ、そもそもが暗いわけですから、特に「色味」の情報が欠けてしまっています。

夜、外ねこに餌やりしているとき、暗いのでそれがキジだかトラだかサビだかわからないことって、ありませんか? 「なんとなく白っぽい」「なんとなく黒っぽい」はわかるけど、茶系なら茶系のどういう色なのか、暗いところだとわからない。

外ねこへの餌やりなら「暗いと、おまえたち、誰が誰だかわかんないねー」で済みますけれど、シャッターを押されたデジカメが「すいません、色、わかりませんでした」と謝って済むわけはありません。したがって、カメラは「嘘でもいいから」とがんばって僅かな情報から色を表現しようとします。ISO感度を上げた場合に撮れる写真は、そんなわけで、カメラが「嘘でもいいからとにかく答えを書いた答案用紙」みたいなもんです。

※デジカメを作っているメーカー同士が今一番競っている分野の一つは、ISO感度を上げても=わずかな光からでも、できるだけ破綻の少ない画を出力するための技術です。言い換えれば、いかにテスト勉強しないでも正しい(っぽい)答えを出すか、メーカーの技術者はヤマカンのはり方を一生懸命研究している、ということになりますね。

具体的に、ふみの写真でみてみましょう。部屋のすみの暗いところにいるふみを、速いシャッター速度で暗めに写した ISO1600(わりと高めの感度設定)の写真です。

IMGP15874
[ Pentax K100D×Sigma 17-70mm F2.8-4.5 DC MACRO ]
[ F4.5 | 1/100s | ISO1600 ]

一見、暗いだけでまともに見えますが、ダンボール箱の表面を拡大すると、ダンボールの茶色ではない、赤や緑、青などのさまざまな色(偽色[ギショク]といいます)が見えています(わかるかな?)。

IMGP15874closeup

こういう偽色が出た写真は、なんだかざらっとした(=なめらかではない)不自然な写真になります。

とはいえ、ブログ上で縮小して見せる分には、さるねこ父はまあ十分だろうと思います。ルーペで細かく見ればどうのこうの言うひともいるかもしれませんが、ねこたちの動きや表情の豊かさ・おもしろさを伝えるには、そのへん目をつぶっていいんじゃないかな、と。

もちろん、毛並みのしっとりした美しさとか、ふわふわっとした一本一本の毛までしっかり写したいなら、ISO感度はあまり上げるべきではありません。そのカメラのマニュアル(の一番後ろの仕様欄)をみて、ISO感度の上から2つは「キレイな写真」を撮るためには避けた方が無難です(経験則)。

4. 最近のデジカメ

さるねこ父が使っているPentax K100D(一眼レフ)とFujifilm FinePix F31fd(コンパクト)は、どちらもほぼ3年前の機種で、ISO感度の上限は3200です(もちろん、カンナの写真をキレイに撮りたいがために、当時暗いところに強いとされていた機種を、相次いで買いました=親バカです)。感度の上2つとは3200と1600ですから、できれば800までに抑えたいのですが、このブログではISO1600を常用しています。それは「ブログ用」と割り切っているからです。

うちの両親はつい先日、デジカメを買い換えました。6年前に買ったFujifilm FinePix F410からPanasonic LUMIX FX60にしましたが、前者は上限800(したがってキレイに撮れるのは最低感度の200だけ)だったのが、後者は「インテリジェント高感度モード」なるものを使うと上限6400まで上がっていました。技術の進歩はすばらしい、と思います。新しいFX60で、ISO1600で撮ると、細かいところではいろいろ無理をして画を作っていますが、古いF410とは本当に雲泥の差でした。

ですからまあ、お金の問題が許すなら(FX60は25,000円ほどで買いました)、新しいデジカメに買い換えるのは、悪くないだろうと思います。

※PanasonicのFX60という特定の機種がねこ写真を撮るのに向いている、と勧めるわけではありませんよ。個人的には、暗いところでの画作りがうまいのはFujifilmだと思います(今だとF200EXRかF70EXRかな?)。FX60は、本当になにも考えずシャッターを押すだけでもそこそこに撮れるので、機械に疎い母でも使えると思い、選択しました。今のところ、その判断は正しかったようです。

しかし、2万円出せるなら、照明を工夫する方に使うのがベターかな、というのがさるねこ父の個人的な感覚です。

長々と書いてきましたが、(1)から始まって今回の(3)までの話をまとめると、こんな感じですね。

  • 照明を工夫して、部屋を明るくしよう!
  • カメラのISO感度は、そのカメラの上限から1段階か2段階下ぐらいまで=ぎりぎりまで上げよう!
  • お金が許せば、新しいデジカメを買うのもいいかも?
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カンナ は 2017年2月7日に亡くなりました(享年11歳5ヶ月9日=人間なら61歳くらい/2005年8月29日生まれ)
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