
ねこ写真を撮る話(4)
少し間が空きましたが、今回は「じゃあ、自分のカメラは、どう設定すればよいの?」という話です。ちなみに、
- ねこ写真を撮る話(1)……明かりを足して明るくしよう
- ねこ写真を撮る話(2)……「絞り」「シャッター速度」「ISO感度」について
- ねこ写真を撮る話(3)……基本は「ISO感度」を上げる方向で
でした。
まず最初に、お手元のカメラの「モードダイアル」を確認してください。うちにあるカメラだとこんな感じです。
上の2つは、左がデジイチ(Pentax)、右がコンデジ(Canon)ですが、ダイアルの目盛のなかに
P - Tv - Av - M
という並びが見えると思います。まずは、これらがある機種についてお話しします。なお、機種によっては(Nikonなど)、
P - S - A - M
P - A - S - M
となっている場合もあります。
ねこ写真を撮る話(2)・(3)でお話しした「絞り」「シャッター速度」を自分で設定するときに選択する目盛がこれです。それぞれの意味ですが、
- P……Program(絞りもシャッター速度もカメラにおまかせ)
- Tv……Time Value(時間値=シャッター速度を変えられる、露出に応じた絞りはカメラにおまかせ)
- S……Shutter Speed(シャッター速度を変えられる、露出に応じた絞りはカメラにおまかせ)
- Av……Aperture Value(絞り値を変えられる、露出に応じたシャッター速度はカメラにおまかせ)
- A……Aperture(絞りを変えられる、露出に応じたシャッター速度はカメラにおまかせ)
- M……Manual(絞り・シャッター速度の両方を自分の好きに決められる)
2=3ですし、4=5です。
1(Pモード)を選んだ場合は、コンデジのオート撮影モードで撮ったのと、設定の上ではそれほど変わりません。
2=3、4=5を選ぶと、2=3の場合はシャッター速度が意のままになる(=子猫の速い動きを、速いシャッター速度を選んで止めることができる)し、4=5の場合は絞りが意のままになる(=ピントの合う範囲を狭めて、ほわんとした雰囲気のある写真にできる)のですが、露出はとりあえずカメラ任せです。
……露出って、なに?
と思われた方は、ねこ写真を撮る場合(2)のはじめで出てきた「適正露出」「露出オーバー」「露出アンダー」という言葉を思い出してください。「露出オーバー」は「明るすぎるぞ」、「露出アンダー」は「暗すぎるぞ」、「適正露出」は「ちょうどよい明るさだぞ」です。
つまり、1~5を選んだときは、基本的にカメラが明るさを判断して適当に調節してくれます。「おー、さすがデジイチ」と思うなかれ。コンデジでもケータイのカメラでも、その機能は普通に付いています。何十年も前のクラシックカメラなら、「露出計」という機材を別途用意して、それで明るさを測って適正露出を判断していたらしいですが、今のカメラはピンからキリまでどれでも内蔵の露出計で「適当にやっといて」くれます。
逆に考えると、デジイチや、コンデジの比較的上位機種の特長は、6(Mモード)がある、という点に尽きると言っても過言ではありません。カメラまかせでは決して撮れない「超露出オーバー」の明るすぎる写真(月や星を撮る天文写真なんかが極端な例ですし、夜景もその部類です)も、「超露出アンダー」の暗すぎる写真(あんまり実例はないですが……多重露光を使った特殊な芸術写真ぐらいかな?)も、思いのままです。
「ねこ写真を撮る」というこの一連の記事のテーマで行けば、「この部屋は暗いけど……ちょっと無理してシャッター速度を落として、絞りも最大限開いて、できるだけ明るい写真に……」みたいに考えてトライすることができる。あとで述べますが、それ自体は「露出を上げ下げすれば」普通のコンデジでもできなくはないのですが、細かい条件設定を変えながら撮り比べることができるのが、デジイチ~上位コンデジの強みです。
ここまでをまとめると、
デジイチ~上位コンデジでは、Mモードを選んで絞りとシャッター速度を自分で決めることによって、光の条件が悪いところでもかなり柔軟に設定を変えることができる
です。
さて。ここからは「普通のコンデジ」も含めた話です(もちろん、デジイチ&上位コンデジの1~5のモードにも当てはまります)。
この場合、写真の明るさを決めるのは「基本カメラまかせで、適当にやっといてもらう」わけですが、敢えて人間さまが判断して「いや、もうちょっと明るく撮っといて」とか「ここは、も少し暗くてもいいや(その代わりシャッター速度をかせいどいて=速くしておいて=子猫の動きを止めて)」とかいう場合もあるでしょう。それを設定するのが「露出補正」です。露出補正は、こんなアイコンが使われます。
このアイコンからなんとなく想像はつくと思いますが、「適正露出」を0として、明るいめ=露出オーバーにするのが+側、暗め=露出アンダーにするのが-側です。カメラによって異なりますが、たいてい-2~0~+2までを1/3刻みもしくは1/2刻みで設定し、単位として「EV - Exposure Value(露出値)」が付いていることもあります。
この露出補正は、コンデジではほとんどの場合「シャッター速度」を加減することで行なっています(たぶん)。露出補正をプラスにかけた場合はシャッター速度が遅くなり、その分たくさん受光して明るい画になります。逆に露出補正をマイナスにかけた場合はシャッター速度が速くなり、その分暗い画になります。ですから、たとえば露出補正をプラスにかけると、画面は明るくなりますが、シャッター速度が遅くなるので、子猫の速い動きはブレてしまいます。
理屈の話ばかりではうんざりしそうなので、ここで具体的にどういうときにどうすればメリットがあるのか、シチュエーションの例を挙げてみます。
[1]露出補正をプラスにかけてメリットがあるシチュエーション
- 暗めの室内で、しかしフラッシュ(ストロボ)をたかずに、写真を撮りたい……被写体が動かない場合(おとなしく寝ているねこなど)に効果的です。概ね+1ぐらいまで(手ブレが気にならない場合はもっと上げられます)。
- 暗めの毛色のねこ(黒・サビ・グレーなど)の表情や毛並みを、もう少しはっきりさせたい……明るめに撮れるので、少し撮りやすくなります。ただし、シャッター速度は遅くなっている(=ブレやすい)点には注意。+1/3~+1/2~+2/3程度に補正。
- 逆光で窓際のねこを撮りたい……そのままカメラまかせにすると、明るい窓の外に露出が合ってしまうので、肝腎のねこは非常に暗く影になります。思い切って+1~+2ぐらいまで上げてもだいじょうぶなことが多いです。窓の外は当然真っ白にトビます。
[2]露出補正をマイナスにかけてメリットがあるシチュエーション
- 若干光が足りないかな? ぐらいの室内で、ちょこちょこ動き回る子猫を、ブレずに撮りたい……画は暗くなりますが、シャッター速度が速くなるので、子猫の動きを止めることができます。暗くなった分は、PC上で写真ソフトを使って補正することになります。概ね-1/3~-1/2~-2/3程度まで。あまりマイナスにかけると、ソフトで修正しきれなくなります。
- (あとは……ねこ撮りだとあんまり思いつきません。ある程度明るい場所で黒猫を本当に真っ黒に撮りたいなら、マイナス補正で真っ黒になりますが、コワイ写真になるかも。風景撮りだと、一般に、-1/3~-1/2に補正した方がしっとりした感じにはなります。)
こんなところでしょうか。とりあえずは、ご自分のカメラでどうすれば露出補正を調整できるか、ボタン類(&マニュアル)を調べてみてください。索引のあるマニュアルなら「露出補正」で出ているはずですし、ボタンに露出補正アイコンが振ってある場合も多いです。「マニュアルさがすのめんどくさい」という方は……こっそり機種名など教えていただければ、さるねこ父がGoogle先生に訊いて調べてみます。
注意点を2つだけ。
- コンデジの撮影モードによっては、露出補正ボタンが効かない(いっさいをカメラまかせにされてしまう)場合があります。特に「インテリジェントオート」とか「かんたんモード」とか銘打ってあるモードや、シーンモード(夜景とかスポーツとかペットとか、シーンごとに選ぶモード)の場合にそうなったりします。モードダイヤルを回して、どのモードの時に露出補正がかけられるのか、試してみてください(カメラによって本当に千差万別です)。
- 補正の戻し忘れに注意してください。「なんか、どの写真も明るすぎる(暗すぎる)なー」と思ったら、露出補正の戻し忘れをまず疑ってください……慣れてくると、1枚撮ったらおかしいと気づく(あるいは撮る前に補正値を確認する癖がつく)ようになりますが。
さるねこ父もよく失敗します。プラスに補正をかけることが多いので、忘れたまま明るい場所で撮るとふみやカンナが真っ白けになります。よい機会なので、「せっかくいいショット撮ったのに、残念!」写真を1つ載せましょう。
ふみが「とててて……」とカンナに近寄ったものの、窓の外に気をとられて、ふいと後ろを向いたとき、カンナがつられて「おい……用があるんじゃなかったのか?」と歩み寄ろうとしていたのですが、白トビしてニュアンスが消えてしまっています(涙)。が、ここで紹介できたのでよしとしよう。
まとめますね。
自分のカメラで「露出補正」のかけかたを確認しておくと、いくつかのシチュエーション(上を参照)では役に立つことがある。ただし、補正の戻し忘れに注意!
とりあえず、これでカメラの話はいったんひとくぎりつけようと思います。
……まあ、そう言わんと。
