
このペットフードは、適切で安全なものなのか?
我々さんのブログ「猫と我々」の記事を読みながら考えさせられたことがあります。まださるねこ父のなかで咀嚼しきれていないし、十分な情報を集めたわけではないのですが、考え始めた覚書として記しておきます。
始まりは、我々さんのこの記事です。
2001年に非常に残酷な動物実験をしていることが明るみになったアイムス(アイムス、ユーカヌバ)は、多くの製品において非常に残酷な動物実験をしているP&G(Procter&Gamble)と2008年に合併し、動物実験をしていないナチュラ社(EVO、イノーバ、カリフォルニアナチュラル、カルマ)は非常に残酷な動物実験をしているP&Gに2010年に買収されP&Gの傘下に。
えーーっΣ(゚д゚lll)
わたくしの今更具合にもビックリ?
アイムスの動物実験の話はググればごろごろ出てきますし、P&Gの話も有名で、さるねこ父も知っていました。アイムスの方はたとえば、腎臓サポート食の効果を確認するために、意図的に腎臓を摘出して1/8に腎機能を落とした犬で生体実験を行なっていたことが、スキャンダラスに暴露されています。
このブログをお読みの方の多くはねこ飼い・いぬ飼いさんのはずで、そうした話を聞けばおそらく強い嫌悪感を感じると思います。「えー、そんな酷い動物実験をしている会社の製品は、うちの子には食べさせたくない~」とまずは思うでしょう。 そんな「悪い」会社のフードじゃなく、「ちゃんとした・適切な」会社のフードを食べさせたい、はず。
そこから動物実験を行なっていない会社のフード(少なくとも残酷な動物実験は行なっていない会社のフード)を探し始めると、途端にフード難民になります(我々さんのフード難民ぶりは、記事1・記事2・記事3・記事4)。信頼できる情報はそもそも限られていますし、その中からせっかく見つけた動物実験フリーのフード会社も、経営のために、動物実験を行なっている大手に買収されてしまっていたりして。
さるねこ父が知る範囲で、動物実験 (animal testing) フリー(もしくは給餌実験 (feeding trial) のみ)で製造していることをウェブサイトで表明しているキャットフードは、ワイソング、ヤラー、ソリッドゴールドといったオーガニック系の海外プレミアム・フード会社のものになります(ほかにもあると思いますし、逆にウェブサイトに書いてあることをそのまま信じていいのかという問題もありますので、参考情報としてとらえてください)。
もちろんそれなりにお高いものですし、通販でしか手に入らないし、決しておねこさまたちの食いつきがよろしいとは限らないし、特定の療法食が必要となった子には選択肢としてふさわしいかわからないし、と、動物実験フリーの道を究めようとすればかなりの困難は伴います。
スーパーやホームセンターで並んでいるメーカーの製品はどうなんだ、となると、興味深いことにほとんどが「何も書いていません」。ヒルズやロイヤルカナンなど動物病院で販売されているものもそうですし、日清やネスレピュリナ、ユニチャーム、アイシアもそうです。ご丁寧にもサイト内検索窓を用意して下さっていますので、そこに「動物実験」といれて検索をクリック! してみますと、どこも「検索結果は0件です」となります。してるとも、してないとも、書いてない。ノーコメント、です。NGワードなんでしょうかね。
「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)」という法律があります(2009年6月1日施行)。その第3条では、事業者の責務として次のように定められています。
第三条 製造業者、輸入業者又は販売業者は、その事業活動を行うに当たって、自らが愛がん動物用飼料の安全性の確保について第一義的責任を有していることを認識して、愛がん動物用飼料の安全性の確保に係る知識及び技術の習得、愛がん動物用飼料の原材料の安全性の確保、愛がん動物の健康が害されることを防止するための愛がん動物用飼料の回収その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
ペットフードを製造するにあたっては「安全性の確保に係る知識及び技術を習得」するよう努めなければならない、ということになります。端的に言えば「それ、ペットに食べさせてだいじょうぶ、ねえ、ほんとにだいじょうぶ? 作ったものは、ちゃんと調べてよね」ってことです。どうやって調べるか? ここで動物実験と結びついてくるわけです。本物のねこ、本物のいぬに食べさせて、害がないかを確認しないといけない、ということになってくる。
通常の総合栄養食ならまだしも、特定の効能を謳った療法食になってくると、「半年食べさせましたけど、だいじょうぶですよ~」とかでは済まない。上に挙げたアイムスの例ほど苛酷でないにしても、その効能を謳うために「特定の疾患をもったねこ・いぬを2群に分け、片方にはその療法食を、もう片方にはそうでないものを与えて、療法食を与えた方に有意な効果が認められた」という結果を得なければならない。「そうでないもの」を与えられる群は、腎臓病や心臓病を抱えたまま治療を受けずに実験を受け続けなければならない。療法食というのは、それから逃れることは相当難しいだろうと思います。
「自分の飼いねこ・飼いいぬに、安全なフードを食べさせたい」「病気の子に、それにふさわしい療法食を食べさせたい」という、飼い主として当然の願いは、動物実験という「犠牲」の上に成り立っています。「そんなの、やめて!」ともちろん思うけど、もし企業が動物実験をやめたら、今度は自分の飼いねこ・飼いいぬを使って、自分で動物実験をやらなきゃならない羽目に陥ります。こうしたダブル・バインドから逃れる道筋は、さるねこ父にはまだ見つかりません。
それならせめて、と思います。少数の犠牲の上に多数の安全がもたらされているのが現実なら、せめて動物実験に関わる3R原則(Replacement 代替 / Reduction 削減 / Refinement 改善)だけでも徹底される社会にまずはしないといけない。どうしても動物実験が避けられないとしても、せめて苦痛を少なくするように、できるだけ数を少なくするように。もちろん、どんな動物実験が行なわれているのかという情報公開も必要になってくるでしょう。
今年成立が見込まれている「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正案では、しかし、実験動物に関わる部分は、医薬業界の大反対によって、すべて白紙に戻ろうとしています(cf. 地球生物会議ALIVE - 動物実験について再度訴えを!、ジュルのしっぽ - 動物虐待大国・日本)。
「検索結果0件です」となることと、この業界の動きとは、不即不離のものだろうとさるねこ父は推測します。今はまだ、推測でしかありませんが。
ちなみに、うちのカンナさん・ふみさんが日々食べているのは、以前ストラバイト結晶で血尿を出したことのあるカンナさんはワイソングのユーレティックとロイヤルカナンのベッツプラン メールケアを半々で、特に問題のないふみさんはワイソングのバイタリティを単品で食べています。そして時々、長崎県産の天然魚のお刺身をひと切れかふた切れもらいます。
ずっと健康でいてね(その子たちの分まで)。
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