
返還・譲渡率(平成22年度・猫・ALIVE資料集 No.32より)
以前こちらの記事で「現実」を示す数字を地図に色分けしました。『全国動物行政アンケート結果報告書 平成22年度版』(ALIVE資料集 No.32)のデータを元に、返還譲渡率(保健所やセンターに引取・収容されたねこの数=入所数のうち、何割のねこが譲渡・返還されたかを計算したもの)と殺処分絶対数、それに、人口千人あたりの殺処分数の色分け地図を作成しています。
このうち、返還譲渡率と殺処分絶対数の2つを組み合わせて、もう少し深く考えてみます。
返還譲渡率
殺処分絶対数
この地図の色分けにしたがって、実際の数字を表にしてみます。セルの背景色は、地図の塗りつぶしの色と対応しています。
都道府県 | 入所数 | 出所数 | 返還 譲渡率 (%) | 返還 譲渡率 順位 | 処分数 順位 (少ない順) |
東京都 | 3,155 | 807 | 25.58 | 1 | 19 |
新潟県 | 3,014 | 728 | 24.15 | 2 | 16 |
長野県 | 2,840 | 585 | 20.60 | 3 | 15 |
北海道 | 7,759 | 1,499 | 19.32 | 4 | 42 |
神奈川県 | 4,810 | 878 | 18.25 | 5 | 33 |
千葉県 | 7,503 | 1,257 | 16.75 | 6 | 41 |
福井県 | 1,348 | 211 | 15.65 | 7 | 3 |
岐阜県 | 3,154 | 447 | 14.17 | 8 | 24 |
熊本県 | 2,727 | 339 | 12.43 | 9 | 21 |
山梨県 | 1,575 | 155 | 9.84 | 10 | 6 |
静岡県 | 6,018 | 557 | 9.26 | 11 | 39 |
茨城県 | 3,268 | 288 | 8.81 | 12 | 26 |
埼玉県 | 4,546 | 386 | 8.49 | 13 | 35 |
愛知県 | 9,196 | 776 | 8.44 | 14 | 46 |
京都府 | 4,271 | 338 | 7.91 | 15 | 32 |
宮崎県 | 2,529 | 196 | 7.75 | 16 | 18 |
都道府県 | 入所数 | 出所数 | 返還 譲渡率 | 返還 譲渡率 順位 | 処分数 順位 |
滋賀県 | 1,776 | 133 | 7.49 | 17 | 7 |
宮城県 | 5,414 | 384 | 7.09 | 18 | 38 |
鹿児島県 | 2,970 | 174 | 5.86 | 19 | 25 |
福島県 | 3,987 | 231 | 5.79 | 20 | 30 |
広島県 | 6,868 | 377 | 5.49 | 21 | 43 |
島根県 | 2,124 | 102 | 4.80 | 22 | 13 |
福岡県 | 6,879 | 301 | 4.38 | 23 | 44 |
石川県 | 1,447 | 63 | 4.35 | 24 | 5 |
栃木県 | 1,729 | 71 | 4.11 | 25 | 8 |
岡山県 | 3,111 | 116 | 3.73 | 26 | 27 |
大分県 | 2,572 | 87 | 3.38 | 27 | 22 |
長崎県 | 5,706 | 190 | 3.33 | 28 | 40 |
岩手県 | 2,076 | 66 | 3.18 | 29 | 12 |
愛媛県 | 4,182 | 127 | 3.04 | 30 | 34 |
富山県 | 1,026 | 26 | 2.53 | 31 | 1 |
秋田県 | 1,065 | 25 | 2.35 | 32 | 2 |
都道府県 | 入所数 | 出所数 | 返還 譲渡率 | 返還 譲渡率 順位 | 処分数 順位 |
山形県 | 2,487 | 54 | 2.17 | 33 | 20 |
徳島県 | 1,861 | 40 | 2.15 | 34 | 9 |
和歌山県 | 3,075 | 62 | 2.02 | 35 | 28 |
沖縄県 | 4,896 | 94 | 1.92 | 36 | 37 |
青森県 | 2,393 | 45 | 1.88 | 37 | 17 |
群馬県 | 2,671 | 49 | 1.83 | 38 | 23 |
大阪府 | 8,761 | 157 | 1.79 | 39 | 47 |
兵庫県 | 7,312 | 106 | 1.45 | 40 | 45 |
香川県 | 1,944 | 23 | 1.18 | 41 | 11 |
山口県 | 3,968 | 46 | 1.16 | 42 | 31 |
佐賀県 | 2,220 | 25 | 1.13 | 43 | 14 |
奈良県 | 1,915 | 20 | 1.04 | 44 | 10 |
鳥取県 | 1,301 | 8 | 0.61 | 45 | 4 |
三重県 | 3,417 | 21 | 0.61 | 46 | 29 |
高知県 | 4,413 | 1 | 0.02 | 47 | 36 |
都道府県 | 入所数 | 出所数 | 返還 譲渡率 | 返還 譲渡率 順位 | 処分数 順位 |
返還譲渡率が高い(保健所・センターから出られるねこの比率が高い)のは概して「出所数が多いから」、逆にそれが低いのは「出所数が少ないから」という傾向が、確かに見られます。高知県の出所数「1」は極端な例ですが、返還譲渡率が低い都道府県はおおむね2ケタ以下の出所数、高い都道府県はおおむね数百匹以上の出所数になります。数百を超えるような都道府県の出所数の大部分は「譲渡」によるものです。
ここからはまず次のことが言えます。「生還できるねこの割合を増やしたければ、譲渡に力を入れるべきであろう」と。さるねこ父がネット上の情報で知る限り、上の表で上位に来る都道府県は、行政と民間ボランティアが連携して譲渡のためのシステム構築を熱心に行なっている都道府県とほぼ重なると考えてよいと思います。
たとえば、5,000匹の入所に対して100匹の出所しかなければ、返還譲渡率は2%になります。この返還譲渡率を2倍の4%に引き上げるためには、(1)入所するねこを2,500匹に半減させるか、(2)出所するねこを200匹に倍増させるか、両極端で考えればその2つです。(1)は入口を絞る方法、(2)は出口を広げる方法です。どちらも簡単なことではないですが、5,000→2,500と100→200のどちらがよりマンパワーの働きかけを必要とするかと考えれば、入口を絞る方が大変そうに思えるのは確かです。100人の里親さんを探すのと、何千人の持ち込みを止めさせるのとで比較してみれば、ぱっと見、後者の方が大変と考えられる。
けれど前回書いた記事では「蛇口を閉める」ということを強調しました。何千人の持ち込みを止めさせる方に重点を置いたわけです。一見遠回りで苦労が多そうに見えるそちらの道を、なぜさるねこ父は重視するのか(そしてわたしの知る限り、とらきちさんたち長崎猫の会.のメンバーのみなさんも重視するのか)。それは長崎の地域性を反映しているからです。
長崎県の順位は、返還譲渡率では28位、殺処分絶対数では40位です。いずれも真ん中より下で、決して胸を張れるような状況ではありませんが、返還譲渡率順位>>殺処分絶対数順位であるのが特徴です。似たような特徴を持っているのは、福岡県(23位>44位)、広島県(21位>43位)、宮城県(18位>38位)、愛知県(14位>46位)、静岡県(11位>39位)、千葉県(6位>41位)、神奈川県(5位>33位)、北海道(4位>42位)などでしょうか。これらの都道府県の共通点をまとめると、「出所数(≒譲渡数)は行政・民間ボランティアの努力で多くなっているものの、入所数(≒引取数)も多いために、相対的に返還譲渡率が目減りしている」ということになると考えられます。
だから、少なくとも自分の住んでいる長崎県については、蛇口を閉めることを重視したい。
このことは、長崎県などとは逆の傾向を示す都道府県、つまり、返還譲渡率順位<<殺処分絶対数順位のところと比べてみればはっきりします。富山県(31位<1位)、秋田県(32位<2位)、徳島県(34位<9位)、香川県(41位<11位)、奈良県(44位<10位)、鳥取県(45位<4位)などがそうですが、いずれも「入所数(≒引取数)は少ないけれど、出所数(≒譲渡数)が極端に少ないために、相対的に返還譲渡率が目減りする」ケースです。他県のことにあれこれ口出しするわけではないですが、おそらくこうした都道府県で必要なのは、保健所・センターからもっと多くのねこを譲渡できるようなシステムづくりだろうと思います。
先の記事で「地域ごとにバケツと滴と蛇口の関係は異なる」と書いたのは、おおよそ上のようなことを考えていたからです。そして、さるねこ父が注目したいのは「殺処分絶対数も少なく、返還譲渡率も高い県」が、どのような状況下でどのようなシステムを作っているのかです。具体的には、新潟県・長野県・福井県などですね。ALIVE資料集のバックナンバーも参考にしながら、もっと情報を集めて考えてみたいと思います。
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