
動物愛護法の改正法案は成立しました
「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律案」(第180回国会 衆法第33号)は、8月28日に開かれた衆議院本会議で可決され、今日29日に開かれた参議院本会議でも可決され、成立しました。
つまり、昨年夏のパブリック・コメント以来、8週齢規制や動物実験届出制、あるいはねこカフェ営業規制など、さまざまな議論のあった「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正作業は、これでいったん決着がついたことになります。次の大きな改正があるのは、また5年後です。
このあと、通例数日から一週間くらいで『官報』に掲載されて「公布」され、そこから1年以内に「施行」されます。今後、公布された条文や、審議の際につけ加えられた委員会決議(衆議院)および附帯決議(参議院)について明らかになり次第、記事にしようと思います。
既に公表されている衆議院環境委員会の委員会決議「動物の愛護及び管理の推進に関する件」(2012年8月28日)全文は、下記の通りです。なかなか踏み込んだ内容ですが、これがこのまま実施されるとかいうことではなく、「国会(委員会)の意見として、こうあるべき」という意見表明にしかなりませんが、この先の方向性の一つの柱にはなっていくと思います。
- 動物の愛護及び管理の推進に関する件
- 政府は、動物の愛護及び管理の一層の推進が人と動物の共生する社会の実現に不可欠であることに鑑み、「動物の愛護及び管理に関する法律の一部を改正する法律」を施行するに当たっては、次の事項に留意し、その運用について万全を期すべきである。
- 一 動物取扱業者による不適正な飼養・保管及び販売が後を絶たない現状に鑑み、動物取扱業者に対する立入検査を積極的に行い、必要があれば勧告、改善命令、措置命令及び取消し等の行政処分並びに刑事告発も適切に行うよう、関係地方自治体を指導すること。
- 二 第二種動物取扱業の導入に当たっては、不適正飼養が疑われる一部の動物愛護団体の施設への立入検査等を着実に行う一方で、犬猫の殺処分頭数の減少に寄与している多くの動物愛護団体の活動に影響を及ぼさないよう配慮すること。また、地方自治体の判断で動物愛護団体を届出の対象外とする場合には、団体によって不公平な取扱いとならないよう明確な基準等を基に審査を行い、客観性を十分に担保することを地方自治体に徹底させること。
- 三 マイクロチップを装着させるために必要な規制の在り方については、狂犬病予防法における登録率及び予防注射の接種率の向上に一定の効果が想定されることを踏まえ、同法との連携強化を図りつつ、これを早急かつ積極的に検討すること。なお、マイクロチップの規格及びデータベースで混乱を来たさないよう、官民協働により早期の統一化を目指すこと。
- 四 動物看護師(仮称)については、本法の改正に伴い業務量が増大することが予想される獣医師の補助者として果たすべき重大な役割及び責任に鑑み、資格要件の基準の策定及び技術向上に向けた環境の整備等を関係府省間で十分な連携を図りながら行うとともに、将来的な国家資格又は免許制度の創設に向けた検討を行うこと。また、動物看護師を含む動物取扱責任者の資格要件についても早急に整理すること。
- 五 動物の死体については、我が国の伝統的な動物観や近年における動物愛護の精神の浸透を踏まえて取り扱うよう努めること。また、動物葬祭業に対する法規制の在り方についても、火葬・埋葬施設等の需要の拡大とともに問題事案が増加する中で一部の地方自治体が条例で規制を行っている現状に鑑み、動物の生命尊重を目的の一つに掲げる本法の中に組み入れる選択肢も含めて早急に検討を行い、必要な措置を講ずること。
- 六 犬猫の引取り数の減少が殺処分頭数の減少に寄与することに鑑み、引取りの要件を厳格化し、引取りを繰り返し求める者や不妊去勢手術を怠ってみだりに繁殖させた者からの引取りを拒否できるようにするなど、引取り数の更なる減少を目指すこと。また、飼い主の所有権放棄により引き取られた犬猫も譲渡対象とし、インターネットの活用等により譲渡の機会を増やすこと等を通じて、殺処分頭数をゼロに近付けることを目指して最大限尽力するよう、各地方自治体を指導すること。
- 七 実験動物の取扱いに係る法制度の検討に際しては、関係者による自主管理の取組及び関係府省による実態把握の取組を踏まえつつ、国際的な規制の動向や科学的知見に関する情報の収集に努めること。また、関係府省との連携を図りつつ、3R(代替法の選択、使用数の削減、苦痛の軽減)の実効性の強化等により、実験動物の福祉の実現に努めること。
- 八 飼い主のいない猫に不妊去勢手術を施して地域住民の合意の下に管理する地域猫対策は、猫に係る苦情件数の低減及び猫の引取り頭数の減少に効果があることに鑑み、官民挙げて一層の推進を図ること。なお、駆除目的に捕獲された飼い主のいない猫の引取りは動物愛護の観点から原則として認められないが、やむを得ず引き取る際には、猫の所有者又は占有者を確認しつつ関係者の意向も踏まえた上で、引取り後に譲渡の機会が得られるよう最大限努めるよう、各地方自治体を指導すること。
- 九 動物愛護推進員の多寡が東日本大震災における被災動物への対応に大きな差異をもたらした教訓を踏まえ、現在は未委嘱の地方自治体に対して推進員の早急な委嘱を促すこと。なお、委嘱に際しては、動物愛護管理に係る施策の担い手となり得る獣医系大学又は動物専門学校等の卒業生も積極的に活用することを推奨するとともに、動物愛護推進員が動物取扱業者等による不適正飼養等の事案に積極的に関与できるようにすること。
- 十 被災動物への対応については、東日本大震災の経験を踏まえて、動物愛護管理推進計画に加えて地域防災計画にも明記するよう都道府県に働きかけること。また、牛や豚等の産業動物についても、災害時においてもできるだけ生存の機会を与えるよう尽力し、止むを得ない場合を除いては殺処分を行わないよう努めること。
- 十一 犬猫等収容施設の拡充、飼い主のいない猫の不妊去勢手術の促進、動物愛護推進員の活動の強化等動物愛護管理に係る諸施策を着実に実施するため、地方自治体に対する財政面での支援を拡充すること。
- 右決議する。
個人的には、緑字にした第6・7・8・11項が、どのように運用現場に影響を与えていくのか、注目したいと思います。「これやりたい、ああすべき」といって必要となるのは「予算」です。それをどの程度確保していけるのかによって、この委員会決議が画餅と化すか否かが決まってきます。
