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まもなくパブリック・コメントが募集されます

「動物の愛護及び管理に関する法律」の改正法は9月5日に公布されました。実はこの法律は、動物の愛護及び管理に関する全体的な方向性(基本指針)を定める、いわば骨格にあたる法律で、実際にその骨格に基づいた細かいルールやなんかは、また別に「政令」「省令」「告示」などとして定められることになっています。

※「法律」は国会で国会議員たちが審議してつくられるルール(法令)ですが、これに対し「政令」は総理大臣をトップとした内閣で定められるルール、「省令」は法律や政令を運用していくときに所管となる各省(の大臣)によって定められるルールです。強さ・エラさの順位は 法律 > 政令 > 省令 の順になります。一方、「告示」はルール(法令)ではなく、「これこれについて、細かい点はこうですよ」と示す説明書きみたいなものです。

 

こうした細かいルールを決めていく作業、つまり改正された骨格に基づいて肉付けしていく作業が現在進められています。環境省の中央環境審議会動物愛護部会というところで、議論やヒアリングが行なわれ、それに基づいて環境省のお役人たちが膨大な書類を処理しつつ、必要な「細かいルールづくり」を行なっているわけです。作らなければならない細かいルール一覧(資料4)はこちらどういうスケジュールでそれらを作っていくか(資料3)はこちらに資料があります(2012年9月6日・第31回動物愛護部会資料)。資料4に上がっている項目を数えると、全部で48もあります。お役人も大変ですねえ。

 


 

さて、資料3では、11月に第34回動物愛護部会が開催され、そこでいくつかの項目について議論されることになっています。11月6日がその会議日で、その結果はいくつかの新聞でも報道されたので、あるいは目にされた方もいらっしゃるかもしれません。

ロイター&共同通信の記事は、そのまま地方新聞にも転載されていますね。短いので、ここでも引用しておきます。

 環境省は6日、安易なペットの飼育放棄を防ぐため、地方自治体が飼い主から犬猫の引き取りを求められた場合に拒否できる基準を決めた。高齢や病気が理由なら拒否できるなどとしており、同日の中央環境審議会動物愛護部会で了承された。8月成立した改正動物愛護管理法は自治体が販売業者からの犬猫の引き取りを拒否できると明記。6日の部会では、一般の飼い主についても拒否できる基準を省令に新たに盛り込むことを決めた。

ロイター 2012年11月6日 21:49 JST

このなかで「高齢や病気が理由なら拒否できるなどとしており」というのはあいまいな文章で、実際には「犬猫の」高齢や病気が理由なら拒否できる、なのですが、なんとなく「持ち込み者の」高齢や病気と勘違いされる懸念が、なきにしもあらずだったりします。

実際、長崎市動物管理センターに持ち込まれるケースの中には、「それまで飼っていた高齢者が入院するので、飼いねこ・飼いいぬを引き取ってくれないか」というのがけっこうあったりするので、さるねこ父はちょっと「あれ?」と思った次第です。(もちろん、「飼い主が、このねこ・いぬは年寄りだから・病気だから、センターで引き取ってくれと連れてくる」ダメダメなケースもままありますが。)

 

11月6日の部会を傍聴された方のブログ記事やツイートもぼちぼち上がっています。

行政が犬猫の引取りを拒否できる条件に関する資料は、1番目のブログ記事に写真が上がっていますので、ここで文字化しておきます。文中の「改正法第35条第1項但し書き」「改正法第7条第4項」の内容は、こちらの資料で確認できます。

(2)引取りを求める相当の事由がないと認められる場合について
 【改正法第35条第1項但し書き】

1.基本的な考え方

  1. 改正法第7条第4項に定める終生飼養の原則に照らして適切でない場合については、都道府県等が犬猫の引取りを拒否できることとすることにより、飼養者の安易な飼育放棄を抑制する。
  2. 第35条の目的は、引き続き生活環境の保全の支障の防止であり、これに反しない範囲で引取りを拒否できるものとする。

2.規定案

改正法に定められている犬猫等販売業者から引取りを求められた場合のほか、以下の場合を規定する

  1. 繰返し引取りを求められた場合
  2. 子犬や子猫の引取りを求められた場合であって、繁殖制限措置を講じる旨の指導に応じない場合
  3. 犬猫の高齢化・病気等の理由股は当該犬猫の飼養が困難であるとは認められない理由により引取りを求められた場合
    ※「飼養が困難であるとは認められない理由」としては、飼うことに飽きた、世話が面倒等の理由が想定される。
  4. 引取りを求めるに当たって、あらかじめ新たな飼い主を探す取組をしていない場合
  5. その他第7条第4項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として都道府県等の条例、規則等に定める場合

上記場合であっても生活環境の保全上の支障を防止するため引取りが必要であると判断される場合にあってはその限りでない。

第34回部会多頭飼育の動物虐待(25条3項)引取り拒否権(35条1項)関連資料 | 猫とワイン

 

ロイター&共同通信記事では不明瞭だった「高齢や病気が理由なら拒否できる」については、2-3. でちゃんと「犬猫の」となってますね。ヘンな端折り方をしたものです。それよりも、さるねこ父的に重要だと思えるのは2-4. の「あらかじめ新たな飼い主を探す取組をしていない場合」の方ですね。これは、大事なことでもあるし、また、今のままではまだまだ行政も準備不足だろうと思うことでもあります。

 

譲渡会のお手伝いなどをしていてわかってきたのですが、ふつうの人は、まず「譲渡会」というイベントにたどりつくまでに大変な苦労をしています。高齢の方であれば特にそうですが、よほど気をつけていないとその情報は入ってこないし、自分がいざそういう状況に陥ったときにタイミングよく譲渡会が開催されているとも限らない。自分の周りにいる何人かのねこ好きに声をかけて、だめだったら「行政に引き取ってもらおう」しか解決策を思いつかなくても、そのこと自体は責めては酷だと思うのです。

行政の窓口に「引き取って下さい」と申し出て、ではそこで里親さがしに関するさまざまな情報――譲渡会はいつどこで開催されているかとか、里親さがしのポスターをつくってお店に貼らせてもらうのも一つの手だとか、ミニコミ誌に連絡を取ってみるとよいとか、自治会役員や民生委員さんにも協力してもらってはどうかとか、ボランティア団体は引き取ってはくれないが相談には乗ってくれるからいろいろと教えてもらったらよいだろうとか……まあ、そんな情報を行政の窓口からもらえるかどうか。

「新たな飼い主を探す努力をしておきなさい」と言って門前払いにするのは簡単ですが、それだけではその人は途方に暮れるだけでしょう。困った挙げ句に、そのへんにこっそり放ってしまうかもしれない。ねこにとってはそれも悲劇ですし、放たれた地域の住民も迷惑を被ります。

 

現在の動物管理行政の窓口は、ある意味社会の暗部のような場所です。できるだけ人目から隠すようにして、命を引き取り、命を消す場所です。そうならないような努力を、各地の職員さんは続けているだろうけれども、社会の一般的なイメージとしては、保健所・動物管理/愛護センターは限りなく灰色で、できれば近寄りたくない・関わりたくないところになってしまっています。

ほんとうはもっとそれを、命をつなぐための結節点にしていかないといけないし、そのためには他の行政部署や自治組織、市民ボランティアなどと連携して「動物で困ったときの気軽な相談窓口」「そこに行けば何かしらアドバイスがもらえるところ」にならないといけない。バラ色とまではいかないにせよ、こびりついた灰色のイメージを払拭する必要があるだろうなあ、と強く思います。

 


 

個人的な感想が長くなりましたが、そういうわけで、そうした「引取り拒否」の問題も含めた「細かいルールづくり」のために必要となるパブリックコメントの募集が、まもなく始まるようです。

動物愛護管理法改正に伴う省令等のパブコメ募集は来週から1ヶ月の予定。 ◎不適正な多頭飼育に起因する「虐待を受けるおそれがある事態」 ◎35条但し書(引取を求める相当の事由がない場合) ◎犬猫等販売業 ◎現物確認・対面販売 ◎第二種動物取扱業 ◎特定動物が飼養困難になった場合の措置

[Twitter] ねむり猫@muminsaru 2012年11月7日 12:50

 

募集が始まったら、また資料をまとめて記事にしようと思います。「環境省新着情報メール配信サービス」というのに登録すると、メルマガで環境省サイト更新の連絡が毎日届くようですので、いち早く情報を手に入れたい方は登録してみてもよいかもしれません(さるねこ父はさっき登録しました)。

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テーマ : ペットと行政
ジャンル : ペット

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