
ねこの疥癬(猫疥癬と耳疥癬)
B町のねこさんに「しろ」という名前のオスねこがいます。
(2011年10月25日撮影)
行動範囲の広いねこで、ふらっと現れてはしばらく見かけるものの、またどこか別の場所を居所にするのか1ヶ月以上も見かけなくなる、というのをくり返していたのですが、年末に1ヶ月半ぶりに現れた「しろ」を見て、思わず「うわー!」と叫んでしまいました。首の後ろから顔にかけて、まるで泥水に浸かったように茶色く薄汚れていて、後足で首から顔から激しくかきむしっては「に゛ゃーに゛ゃー」と悲鳴をあげています。薄汚れているのは、かきむしってただれた皮膚からにじみ出る体液のせいです。首筋や耳の毛は既に抜け始めていて、ピンクの地肌に血がにじんで、これはまず間違いなく「猫疥癬」だろうと判断しました。
ねこの疥癬の原因はダニ(ヒゼンダニ)です。ネコショウセンコウヒゼンダニ(猫小穿孔ヒゼンダニ)とミミヒゼンダニ(耳ヒゼンダニ)がいて、前者が引き起こすのがいわゆる「猫疥癬」、後者が引き起こすのがいわゆる「耳疥癬」です。ただ「疥癬」というと、前者を指しますかね。
猫疥癬は、上に挙げたような症状から、さらにひどくなると、かきむしったところからかさぶたになり、皮膚が分厚く固い感じに変わっていきます。頭から首の周りにかけて症状が出やすく、悪化すると背中やおなか、手足まで全身の毛が抜けることもあります。感染経路は、ダニを持ったねこと直接接触するケースが大半で、また人間(の衣服)を介して外ねこの疥癬を飼いねこにうつしてしまうこともあるので注意が必要です。人間にも感染するいわゆる「人獣共通感染症」になります。
耳疥癬は、症状が出るのは耳周りに限られており、耳の中に黒っぽいワックス状の耳垢が溜まることと、しきりに耳をかいたり頭を振ったりする様子から判断されます。確定診断は耳垢のなかにミミヒゼンダニがいることで行なわれます(この点は、ネコショウセンコウヒゼンダニによる猫疥癬も同じです)。
治療法ですが、耳疥癬=ミミヒゼンダニに対してはレボリューションの滴下が効力があります(レボリューションについては以前記事にしています)。猫疥癬=ネコショウセンコウヒゼンダニについては、レボリューションは効能外(適応外)ということになっていますが、経験則的に猫疥癬の子にレボリューションを滴下することで、症状は緩和されます(こちらも参考にされてください)。あとは、猫疥癬にはイベルメクチンの含まれた駆虫薬を飲ませるのが一般的だと思います。
……というわけで、「しろ」にレボリューションを垂らしてやらねば……と思ったものの、既に年末の29日。30日は日曜日だし、年明けまでムリか……と病院のホームページを開いたところ、なんと「30日お昼までやってます」ということだったので、駆け込みで事情を説明し、レボリューションを処方してもらいました。念のため、2本。
そして、その日のうちに現れた「しろ」にレボリューションをなんとか垂らすことができました(予想通り1本は無駄にしました(^_^;))。以後、経過観察中ですが、脱毛はひどくなっているものの、かきむしる動作はほとんど見られなくなったため、一定の効果はあったようです。3~4週間おきにあと1、2回垂らしてやることで、もとの白い毛に戻ってくれるといいなあ、と思います。
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