
ながさきの離島:池島のねこ(2)
鼻風邪はどうにか治りました。心配してくださったみなさまありがとうございました。
さて、池島のねこです。2011年3月に訪れたときのことを(1)として、今回は(2)となります。
池島では、人口よりも多いくらいの外ねこが暮らしています。不妊化されているわけではないので、さかりの季節が来るとたくさんの子ねこが生まれ、その8~9割は生き残ることができずに短い命を終えます。生き残ったねこたちは、また新たな代の子ねこを生みます。ねこのもたらす糞尿とノミ・ダニは住民生活に影響を与えており、それをどうにかしてほしい、というのが以前からの池島住民の方々からの希望でした。
その後の管理の問題もあるにせよ、とりあえずまずは一斉不妊化だろうということで、2012年11月23日に5地区43匹(♂19匹・♀24匹)に対して不妊化手術が施されました(→とらきちさんの記事参照)。今回池島を訪れたのは、その後手術をしたねこたちがどうなったか、また、どのくらいの割合のねこたちが手術を受けているか、そして住民の方々はTNRをどう受け止めているのか、を確認するためです。
一斉TNRがそれなりに目に見える効果を生むには、一定以上の割合のねこたちの不妊化が完了していなければなりません。100%が理想ですが、M町や(あまりこれまで報告していませんが)T町の事例などから考えても、7割を超えないとなかなか効果は実感できないのではないか、と考えています。2~3割では、ほとんど心理的負担(また子ねこが生まれてくるのではないかという不安)を解消することはできないと思います。
昨年11月の43匹は、テストケースということで手を付けたものです。一度やってみて、どのくらいの獣医師とボランティアがいればどのくらいのねこの不妊化手術ができるか、ねこの捕獲~手術~リリースの流れをどのようにすれば効率的か、住民の方々にはどのように手伝っていただくのがよいか、などなど。大規模TNRは、その土地その土地の条件(ひと・ねこ・環境)によって、最適なやり方は異なります。ほかの地域の事例は、参考にはなるけれども、そのままあてはめることはできない。だからまずはやってみよう、という感じでした。
一番気になっていた手術率ですが、2箇所見て回ったうちの1箇所目は、見かけたねこが17匹、そのうち不妊化済み(耳カットあり)の個体が4匹(♂2匹・♀2匹)。2箇所目は、見かけたねこがおよそ30~35匹、そのうち耳カットありが9~10匹。ざっと25~30%程度が手術済みという計算になります。
手術ができた子は、餌やりさんなどが捕獲できたねこ、つまり、人前に出てくるタイプのねこです。そうではない、人に慣れていない子たちもいるはずで、その子たちはほとんど手術されていないはず(そしてわたしたちも見かけていないはず)だと考えると、実質的な手術率は2割を切ってもおかしくないだろうと思います。
ということは、不妊化の効果自体を実感するのはおそらく難しいだろうというのが、冷静な分析になるでしょう。なので、次の一斉不妊化を、できるだけ子ねこの出産時期の前=4月までには行なって、少しでも不妊化率を上げたいところです。ある程度地区を絞って、その地区の不妊化率を7割近くまで上げていくのがおそらく望ましいはずです。
術後リリースされたねこのその後の状況ですが、残念ながら直後に命を落としたケースがあったようです(おそらく麻酔のショックか、あるいは手術に堪えられない体力の子だったか、どちらか)。
直接お話ができた方から伺ったかぎりで3匹、伝聞ではそれ以外にもいたようで、このあたりは次回以降、何らかの改善策をとるべきだろうと感じました。池島まで獣医師とボランティアが出向く形では、術後の急変などには対応しきれないし、十分な事前検査も行なえない。ひとが来るのではなく、ねこを外に連れていく方が、ねこのことを第一に考えるなら正しい選択だろうと思います。ただ、それが一筋縄ではいかないのが、離島である池島が構造的に抱える問題ではあります。
住民の方々(主にねこに積極的に関わっている方々)の反応は、全体として良好でした。時間と器材の制約で、せっかく捕獲して連れていったけれども手術してもらえなかった方、後からでいいやと考えていたら枠が埋まってしまってできなかった方もいらっしゃいましたが、「また次の機会には、ぜひ」というふうに、前向きに考えてくださっていたので一安心しました。
そして「次もまた(近いうちに)やってもらえること」が、少なくともわたしたちが出会った住民の方々の多くが持っている期待であり、希望でした。わたしたちも、次の子ねこ出産ラッシュの前に(&獣医師の先生方が狂犬病予防接種で忙しくなる前に)次をするべきだと考えていますが、それは住民の方々も同じだということです。半年、一年と間が空いてしまえば、一斉TNRとしても意味を持たなくなるし、住民感情的にもマイナスです。
問題は、手術のための予算と、手術後の中長期的な管理です。ざっと見積もって残り200匹はいるであろう外ねこの手術費用は数百万円に上ると見積もられますし、それだけの金額を投入するのであれば(出元が税金であれ、善意の下に集まったお金であれ)、中長期的に外ねこをある程度管理していけるような体制を池島内で構築していかなければいけないでしょう。「どうも少なからず子ねこが生まれているようだ」とか「山の方に、未手術の群れがいるようだ」とか、そういった観察を怠らないようにすることが必要になるし、手術だけ済ませても、糞尿やノミ・ダニの被害を減らしていくには、そこでまた人手が必要です。
いろんな問題をこれからも一つ一つ解決していく、長い道のりが始まったところ、というのが現在の池島の状況です。
池島のねこさんたちの写真は、次の記事に続きます。
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