
ふみがうちにくるまで(3)
現場に着いてみると、子猫の声は、ゆうべよりも小さくなってきているように思える。コンビニで、店長への引き継ぎはされていること、やはり昨夜のうちに警察から連絡があってレスキューは消防にと言われたことがわかる。
さて。明日までただ待っているというわけにもいかないので、だめもとで消防署に行ってみることにする。さいわい、歩いて5分もかからない……あれ? 消防って日曜も開いてるのか? そりゃ火事なら出動するだろうけど、窓口とかって開いてるのか? そもそも窓口ってあるのだろうか……と考えているうちに着いてしまう。「御用の方は2階の窓口へ」と親切に案内板も出ている。なあんだ。ちょっと期待がふくらむ。きびきびと応対をしてくれた署員の方に向かって、「すいません、警察に相談したらそれは消防に、ということで、子猫のレスキューなんですが……」
しばらく粘ってみたが、結果は×。日曜だから、ということではなく、そもそもうちは人命救助が最優先であって、ペットレスキューは余裕があれば出ないこともないが、特別な道具(たとえばファイバースコープとかマジックアームとか)を持っているわけではないから、建物を壊す以外にはどうしようもない、そもそもうちは動物の専門ではない……ということだった。そして、動物のことなら茂里町にある長崎市福祉保健部動物管理センターに連絡してみて下さい、そちらも平日昼間に開いていますが、と言われてしまった。
「動物管理センター」は要は飼えなくなったペットなどを引き取ってくれる部署である。そりゃ「動物のことなら詳しい」だろうけれども、「レスキュー」とは反対方向のベクトルのような気がしないでもない。
消防署から戻って、ふと、建物に貼られた広告掲示に気づく。「この建物の物件のお問い合わせは○○不動産へ」。そうか。不動産業者からオーナーへ連絡してもらえばいいのではないか、ということで、今度はコンビニ向かいの不動産屋に向かう。
結果から考えてみると、これが正しかった、ということになる。とりあえず現場確認ということで社員の方数名が見に来てくれ、こりゃまずい──なんで通気口の蓋が壊れているんだ、管理責任もあるし、中で猫に死なれても困る──、みたいなことでオーナーさんへ連絡をとってもらえることになった。オーナーさんは建設会社なので、日曜は連絡が取れるかどうか微妙だが、とにかくFAXを流したりして、できるだけ今日中に連絡をつけます、と約束してもらった。
そして、不動産業者の人が来てくれるのを待っている間に、コンビニの店長さんも現われ、重要な情報をもたらしてくれた。1階のコンビニの真下に地下室──ポンプ室があること、何年かに1度定期点検をする際にはコンビニのレジ床にある蓋を開けて下に入っていくのだということ。おそらくそのポンプ室からの通気口であろうし、助けるのであれば店の床下を経由してアクセスするのだろう、ということがわかる。その情報もあわせて不動産業者の人に伝えられ、子猫レスキューは一気に解決に向かって動き出すことになった。
その後昼過ぎから、タオルをワイヤーを使って子猫のそばまで近づけ、それに爪に引っかけさせて引き上げる、という平野町ペットクリニックから提案されたレスキューにトライしてみるが、不調。
午後2時過ぎになって、不動産屋から連絡を受けたオーナー会社の担当の方が現場に到着。これまでの経緯といくつかの連絡先(動物管理センターも含め)を伝える。「わたしも猫飼ってますからわかります、この鳴き声ならまだだいじょうぶ、明日のレスキューを待ちましょう」ということで、子猫の消耗を避けるための囲いをつくったりしてこの日は引き上げることに。
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